| 入学式 writer:魅彌 さま |
「さて、貴方達には明日からここで頑張ってらっしゃい」 魔界bQの魔神ラミエルに渡された服と一通の書類。 服は学生服だった。 黒を基調とし、丈は足下まで。一昔前に流行った長ランというやつだ。 前をはだければコートとして使えることかもしれない。 「どっしたの? ぼーっとして」 シルーネが心配そうに脇腹を突っついてきた。 シルーネのはセーラー服だった。これもスカートの丈は足下まである。スケバンを思わせる格好だ。 何もうちらだけに限った話ではない。ここの学生全員がそうなのだ。これも学校指定だそうだ。 生徒数全国津々浦々総勢300名。 どこの学校にもひけを取らない不良校だ。 入試は名前だけ書けば入れると言われていた。 事実、試験では名前を書いただけなのに受かっていた。 「ここ、本当に学校か?」 思わず口をついて出てくる言葉。 校舎は落書きされ放題、窓ガラスは割れまくっており、段ボールで仮処置してあるところまである。 校門のところにはらしく、「入学式」の看板はあるがこれも殴り書きっぽい。しかもスプレー。 この時間―今は9時半―に門前にいる連中ということは、ここの新入生なのだろうがガラが悪すぎる。パーマ、モヒカン、スキンヘッド、見事に染め上げられた頭。 そもそも何でこんな学校を選んだんだろう? 今思うと、不思議でしょうがない。 『行くなら楽しいとこがいいよね』 シルーネのこの一声がすべてを決めた。それがこの学校だった。 「ほら、行こうよ」 シルーネが袖を掴んで急かせる。 時計を見ると、直に式が始まる頃だった。 「…………」 最早、言葉すら出てこなかった。 ガラの悪さは想像以上だった。生徒のガラの悪さは重々承知だったが、教師も負けず劣らずだ。 軍服、長ラン、釘バット、刀、バタフライナイフ。学校というより族の集会だ。 「気をつけえ!」 耳をつんざくような声が構内を震わせる。 「てめえら、よく来たな。俺がここの校長だ。よろしくう!」 男は長ランを羽織り、前をはだけていた。年の頃は30くらいだろうか。 完全に族のしゃべり方だった。 「よろしくう!」 それに呼応するように生徒側からも轟音のような声が響く。 バカだ。学校と呼ぶのすらおこがましく感じる。 式らしい式は行われず、教師の顔見せで時間が過ぎていった。 その間も酒は飲むわ、喧嘩はするわ、それを誰も止めないわで気が休まる暇すらなかった。 「面白そうな場所だよね♪」 「…面白いか? っつうか、3年間もつのか?」 最早、不安しか残っていない。 まともな教師は一人もいなかった。 族、ヤクザ系の悪魔ばっかしだった。 「え〜? だって喧嘩できるんだよ」 「って喧嘩しに来るわけじゃないし、ってこれじゃ勉強なんて無理だよなぁ」 はぁ〜と深いため息をはく。 シルーネは実に楽しそうだった。 獄下界。ラミエル邸、応接間。 「で、どうだったの? 学校」 「すごく楽しそうだよ、ね。御祢」 「そうか? 今日一日で疲れたぞ」 御祢。この名前は二人が付けてくれたものだった。本当の名前は分からない。 それだけはどうしても思い出せないのだ。人間の頃の名前は。 「ふふ、まぁいいじゃない。頑張りなさい」 ラミさんは笑みをたたえていた。替われるなら替わってもらいたいくらいだ。 これからずっと通うのかと思うと頭が痛くなる思いだった。 「へへ、楽しみだね♪」 こいつは別だな… |