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 一番の薬



 突然呼び出されて告白されたのは、桜の花びらが舞う体育館裏だった。
 僕は、目の前の女の子がうつむき顔を真っ赤にして僕に伝えてくれたたった一言が心に今でも響いている。
 
『ずっと優之介先輩のことが・・・好きです。』

 僕の返事を待つ彼女は震えている。
 小柄な体をやっと立たせているような、頼りなさを感じる。
 彼女の細くて長い髪もその雰囲気を演出しているように感じた。
 真新しい制服、真っ白な上履き、その上履きの学年色。
 今年の新入学生のようだ。

「・・・気持ちはうれしいよ。」
 僕がそう言うと少し顔をあげる。今にも涙がこぼれてきそうな大きな瞳・・・
「でも、僕は君の事何も知らない。」
 中学校の後輩にも、こんな子はいなかった。
「友達からはじめよう。」
 ありきたりな断りセリフをはいた僕を、ただ見ている。  
「名前、教えてくれない?」
 僕がいうと、彼女はにっこり笑う。
「はい!北林春夏です。」
 不安で押しつぶされそうだったこの子・春夏が急に笑ったから、僕はビックリした。
 ・・・こんな顔で笑うんだ・・・。
「僕は高橋優之介です。よろしくね、春夏ちゃん」

 僕の高校2年次はこうして始まった。

 by.森本万理 さん

 正直、僕には今まで女の子の友だちはいなかった。
 学校で話すとかそういうのはあったけれど。
 あえて一緒に帰るとか、遊ぶとかどこかに行くということはなかった。

 あの日から2週間、彼女は僕の帰りを校門で待っていてくれた。
 僕は恥ずかしさからいつも、みんなよりずっと遅く学校を出ていたけれど、それでも彼女は待っていてくれた。
 一緒に帰っても、特に何も話さないのに……、それでも待ってくれる。
 ところが、今日はいなかった。
 確かにいつも約束をしているわけではなかったけれど。だけど……。
 なんとなく僕は校門のところで待ってみることにした。
 曇り空でじめじめした天気だけど、何もすることはないけど、ただ待っているというのもそんなに悪い気はしなかった。
「ねー、キミ! 高橋君だよねっ?」
 ボーっと待っていると、突然後ろ……、学校の外から声がかかってきた。
 by.薙刀しき

 それは女生徒だった。
 ただ違和感を覚えるのはその制服がここではなく、余所様のだった。
 見た目的には可愛い部類に入るだろう。
「え〜と、どちら様で?」
 どう見ても少女に見覚えは無かった。
 もともとそんなに人付き合いは得意ではなかった。友達といえるのもそんなにはいない。この学校でいえば級友数名と春夏くらいではないだろうか。
「あ、そうだね。自己紹介まだだったよね。私は…」
 by.魅禰 さん

「わたしは北林秋夏。春夏の2つ上の姉なの。よろしくね、高橋優之介くん。」
ふたつうえ?……………僕よりも年上かよっ!!
優之介の動揺に気付いているのかいないのか、彼女は話を続ける。
「春夏ねぇ…今、風邪をひいてて…。」
「えっ!?」
そういえば…一昨日の夜、急に気温が下がったっけ…。
「40度も熱があるのに、うわ言で『優之介くんといっしょに帰りたい……』とか『優之介くんを待たなきゃ
……』とか。まったくうるさいったら。あたしも進路で悩んでるってのに。」
むかっ!
「あなたは…春夏ちゃんが心配じゃないんですかっっ!!」
彼女は続けた。
「そりゃ心配よ。かわいい妹だもん。だから、ここに来たんじゃない。」
「…どういうことですか?…」
「くすくす…にっぶいわねぇー。特効薬を取りに来たんじゃない…。」
 by.御厨るうき さん

「は・・・」
特効薬・・・て?
鈍いと言われるのはいつものことだが、今回は何だか気にくわない。僕は校門前で真剣に悩んでしまった。

・・・・・まさか、な。
ある予感が浮かんだ瞬間、春夏の姉・・・秋夏は僕の腕を捕み、猛ダッシュで走り出した。

「ちょっとっ、何処まで行くんですかっ!」
「やーねぇ。ウチに決まってるでしょ〜」
やっぱり!
僕にしては珍しく予感的中。
・・・じゃなくて。
「病人の家に行っていいんですかね・・・?」
「なァに?春夏のこと心配じゃないの?!」
「そうじゃないですけど!」
むしろ連れてきてくれるのはありがたい。が、その方法がどうも・・・。
そうこうしてるうちに、秋夏は足を止めた。どうやら、ここが家らしい。赤い屋根の、奇麗な家だった。
「はいはい!さっさと入る!」
「わっ!」
背中を押され、強引に家に入れられた。僕はいいかげんに抵抗をやめ、秋夏の後について、春夏の部屋へと
行く。
秋夏は「HARUKA」という札のかかったドアをノックした。
「春夏〜!お客さん〜!」
 by.紫 さん

 ドアが開くと僕は秋夏に押される。
「わ!優之介先輩?」
 僕の目の前にはベッドに寝かされ、氷枕と氷嚢によって熱を冷ましている春夏のなんとも痛々しい姿があった。
「あれー?春ちゃんの彼ー?」
 ベッドの隣には小学生くらいの女の子が春夏にお粥を食べさせようとしている。
 「冬夏(ふゆか)。春夏と二人っきりにさせてあげよう。」
 秋夏にそう言われ、冬夏はお粥が入ったおわんを置いて秋夏に駆け寄る。
「春ちゃんにお粥あげてねー。」
 そういうと冬夏は秋夏に連れられて部屋を後にした。
 ・・・・・・
 僕は春夏と二人きり・・・
 ・・・・・・・

 春夏は掛け布団で顔半分を隠すようにしていた。
「・・・なんか・・・恥ずかしいですね。」
 春夏の顔は熱で赤かったがいっそう赤くなっているように見えた。
「先輩、立ってないでこちらに座って下さい。」と冬夏が座っていたいすを僕に勧める。
 僕は椅子に進み、座る。
 女の子の部屋は、初めての空間で緊張する・・・。
「風邪・・・大丈夫・・・?」
 僕は春夏の顔を覗き込む。
 春夏はなぜかいっそう赤くなる。
「は・・・はい・・・・・・」
 細く結われたみつあみが彼女の儚さを引き立てる・・・
 by.森本万理 さん

 なんとなく……、そのまま沈黙が流れた。
 何を言ったらいいのか、浮ばなかった。
『あの……』
 どれくらい沈黙が続いたのかわからなかったけれど、春夏と僕の声が重なった。
「あ……」
「先に……どうぞ」
 僕が言うと、春夏は少しうつむいて小さく話した。
「あの……ね、今日は来てくれてありがとう。嬉しかった」
「あ、でもそれは……」
 むりやりつれて来られた、と言おうと思って、やめた。
 心配だったのは確かだし、つれてこられなくても来たと思うから。
「心配だったから」
「……ありがとう。……それで……えと……」 
 そう言われて、僕は、小さく深呼吸した。何を言おうとしていたのか、と言いたいのだろう。
 こんなときに言うのもどうかと思うけど……、今なら……。
「いつも……、その……ありがとう」
「ううん、私が勝手に待っているだけだから……」
「それで……その……、今度から朝、迎えに来てもいいかな?」
 はっきりは言えなかったけど、僕の言いたいことは伝わっただろうか?
 春夏は一瞬驚いたような顔をして……、それからコクンとうなずいた。
 それから、「ありがとう」と言った。
 僕もそれに答えて、「ありがとう」と返した。
 by.薙刀しき





○○○○○○○○○○

ソラ:短編リレー小説第二弾だね。
しき:はーいそうでーす♪ 今回のタイトルはねこじゃらしさんに考えていただきました♪
ソラ:恋愛物のリレー小説なんだね。
しき:そうなんですー。苦手ジャンルなのでどうなるかなぁと思いましたが、皆さんのおかげで無事完結できました!
ソラ:短編だといろいろなジャンルにチャレンジできるんだね。
しき:そうだねー。けっこう良い勉強にもなるな〜って思います。
ソラ:なるほどぉ〜。
しき:さて、最後に……。参加者の皆様ありがとうございました〜!


 
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