[図書館TOP]  [INDEX]
 
 A-Live



 私を助けてくれたのは、まだ小さな……、10歳ほどの男の子だった。
 正確に言うと……、男の子の霊だった。
 今まで幽霊なんか見たことなかったから信じていななかったんだけど、今回は信じるしかないみたい。
 周りの人は見えないって言うし、壁や人をすり抜けちゃうし、どう見たって生きている人のそれではないのだから。
「危ない!」
 とこの男の子が声をかけてくれたから、私は今無事でいる……。
 声が聞こえなければ、私はあの事故にあった車に巻き込まれていたころだろう。
 目の前では白い乗用車が壁に埋まっているのが見えていた。
「助かってよかったですね、沙実さん」
 その男の子が言った。
「ちょ、なんで……私の名前……。あなた……誰?」
「僕は………………です」
 その男の子は名乗ってくれたようだけど、私にはなぜか聞こえなかった。
 何度も何度も聞き返したけど、聞こえなかった。
 by.薙刀しき

「ごめん!もう一回言って?」
 そう聞いた時、男の子は悲しそうにうつむく。
「…僕の名前…聞こえないんだね…」
 そう言った男の子の顔には見覚えがあった…
 どのくらい前にだとか、何処でだとかは覚えていない。
 でも、この子の落ち着いた感じや、優しそうな感じはどこか懐かしくもさせる。
「でも、本当に助かってよかった…」
 優しそうに、切なそうに微笑む。
 私は服についた砂埃を払う。

 私の周りでは、事故処理のためにパトカーが着たり、救急車が着たりしていた。
 人だかりも出来て騒がしくなる。

「よかったね…沙実さん。」
 男の子は優しく言う。
「ありがとう。ところで…」
 私は思い切って聞いてみることにした。
「前にも会ったことなかった?」
 by.森本万理 さん

「それは・・・・」
 男の子は私から目をそらして、口ごもった。
「秘密」
 優しく、そっと私に微笑んだ。
 ・・・はぐらかされてしまった。
「教えてくれないの?」
 私は今にも泣きだしそうな声で言った。もちろん、演技だが。
「そう・・だな・・・・・」
 男の子は、さすがに教えないのは可哀相かな、とでも思ったのか、少し考えてから、言った。
「僕の名前を当てたら、にしようかな。そうしたら教えてあげる」
 いたずらに微笑んだ顔。
 やっぱり、見覚えがある。
 私の横で、いつも笑っていた子。いつも優しい顔をして、わたしの側で・・・・。
 けれど名前が思い出せない。どうしてだろう。思い出はだんだん鮮明になってきているのに。
「君、大丈夫なの?」
 声をかけられてはたと気付く。救急車で来たお兄さんだ。
「だ、大丈夫です!」
「でも、一応病院に行こう。もしかしたら、気付いてない所怪我してるかもしれないし」
「あっ・・・!」
 私は強引に救急車に乗せられてしまった。男の子が、心配そうな顔でついてきた。
 by.紫 さん

 男の子は病院には入ってこなかった。
 入り口までは着いてきていたのだけれど、そこで立ち止まっていた。
 私は、そのまま強引に診察室へ連れて行かれた。
「よし、異常はないようだ」
 医師はそう言った。
 それはそうだ。私はどこもぶつけていないのだから。
 もしどこかに異常を感じるようであればすぐに診察に来てください、と最後に告げると、私は診察室を追い出された。
 私はそのまま外へと向かう。
 あの男の子が待っている。そう思ったから。
「ケイト! 病院内を走るんじゃありません!」
 突然聞こえたその言葉に、私は足を止めた。
 母親が息子を叱った、その言葉。
「あら、ごめんなさい、貴女のことではないんです」
 私が急ぎ足を止めたので、声の主は少し慌てたようだった。
 それは、関係ない。
「ケイト……」
 そう、彼の名前。
 どうして忘れていたのだろう……。
 大切な……、圭斗。
 私は外へ向けていた足を、病院内の階段へ向けた。
 by.薙刀しき

 人の入りもまばらになった夕方。
 病院の自動ドアの前に男の子が立っていた。
 目の前のロータリーの噴水をじっと見ている。
 私は自動ドアの前に立つ。
 自動ドアが開く。
 私の足は自動ドアの前から動こうとはしなかった。
「圭斗…くん。」
 男の子はそう呼ばれ振り返る。
「僕の名前、思い出してくれたんだね。」
 彼の微笑んだ顔から光る物がつたっている…。
「沙実ちゃん…。」

 小学校時代の私は、内気で不器用で、男子によくいじめられていた。
 でも、たった一人私をかばってくれた男の子がいた。
 その子は、泣いてばかりの私に唯一優しかった男の子。
『またいじめられたら僕に言ってね! 僕が沙実ちゃんを守ってあげる!!』
 その子は、運動神経も良かったし勉強もできたから、いじめられっこの私と仲良くしててもいじめられることはなかった。
 その子といる時間はとても楽しく、私が学校で唯一笑っていられる時間だった…。
 あの時の、私の希望だった。

 あの日を境に、私は笑わなくなってしまったけど…。

「け…圭斗くん…なんで…なんで?」
 足が勝手に彼の前に進む。
「私を置いていっちゃったの…?」
 涙が勝手にこぼれてくる。
「沙実ちゃ…」
「圭斗くんが、事故に遭ってずっと眠ったままだって聞いた時、悲しくってどうしょうもなかったんだよ!」
 叫びにも似た声が響く。

 圭斗くんはあの日、登校途中にトラックにはねられた。
 宿題の「友達の絵」を抱いたまま…。
 ずっと眠っている…。
 この、病院のどこかで…。
 私はしゃがみこんだ。
 圭斗くんはしばらく黙っていたけど静かに話し始める。
「沙実ちゃんに…お別れをしにきたんだ。」
 圭斗くんの言葉に私は顔をあげる。
 夕日が、悲しそうな顔の圭斗くんを照らす。
「僕が眠ってからずっとずっと、僕は沙実ちゃんの隣にいた。僕が隣にいるのに、沙実ちゃんが笑わなくなって、悲しかった。…悔しかった。」
「圭斗く…」
「でも、もう終わり。」
「何で…?消えちゃうの?…本当に私を一人にするの?」
 圭斗くんはその透けているちいさな手で、涙でぐしゃぐしゃな私の顔をなでる。
 そして、あの日のように優しく笑う。
「東病棟の305号室に、僕がいるから…」
 圭斗くんの体はだんだん見えなくなっていく…。
 微笑む圭斗くんが見えなくなると同時に、私は再び閑散とした病院内へと走っていた。
 息が切れるのも忘れ、圭斗くんから聞いた病室へ向かう。

 ドアをあけると、私と同じ年くらいの男の子がベッドに横になっている…。
 胸が、ドキドキいってる・・・。
 走ってきたからだけじゃない。
 私はゆっくりとした足取りでベッドの横にたどり着く…。
 枕元には、あの日の宿題が飾ってある。
 画用紙は赤茶色のしみがついている。多分、血。
 そのしみの下に、髪が長くちょっとうつむいた内気そうな女の子が描かれていた。
「題 沙実ちゃん。」
 彼は、あの日の姿ではなかったが、私にはわかる。
 彼は…
「…圭斗…くん。」
 彼の瞳が開いていく。
 そして少し笑って口を動かしたのがわかった。
「……沙…実…ちゃん……」
 変わらない優しい笑顔がそこにあった。
 私は、やっと笑うことができた…。

 ありがとう圭斗くん・・・
 by.森本万理 さん





○○○○○○○○○○

しき:短編リレー小説第一弾の作品です!
ソラ:じつは始めるまで書いてくれるかな……ってビクビクしてたって聞いたよ?
しき:そうなんだよ〜。短編なんてつまらなーいとか言われたらどうしよう……とか。
ソラ:書き込んでくれた人に感謝しなきゃね。
しき:まったくその通りです。ありがとうございます〜!
ソラ:「A-Live」っていうタイトルも誰かにつけてもらったんだよね?
しき:はい、そうなのです♪ これはk-tnさんにつけていただきました!
ソラ:タイトル考えろ〜! って言ったの?
しき:はい♪
ソラ:「はい」って言われちゃった……。
しき:せっかくのリレー小説だから、タイトルを考えた人も立派な参加者になるなってね。
ソラ:リレー小説ならではって感じだね♪


 
[図書館TOP]  [INDEX]