| ちびっこヒーロー |
小さい頃誰もがあこがれた悪者を倒すヒーローの夢。 何十年も前からそれは決まっているものなのかもしれない。映像として流されるそのヒーローを、子どもたちは輝く瞳で見つめている。 こんな風にカッコ良くなりたい。 椅子の上から飛び降りてかっこつけてみたり、父親を悪者に仕立てて殴りかかったり、定規を持って振り回してみたり。 その度に怒られるもへこたれず、ヒーローになりきって遊びまわる。 それが自分の仕事だと言わんばかりに、駆け回る。 そんな純粋な心を持った子どもの言葉。 「ねえママ、どうやったらヒーローになれるのかな?」 「そうね、何でもしっかり食べて、大きく育つことが大事かな」 「でも、ケンタは野菜嫌いだよ?」 ケンタというのは今子どもたちに人気のヒーローアニメの主人公だ。 最近のヒーローものは現実味が有り過ぎるというかなんというか。子供たちのためにも野菜嫌いなんて設定作るものじゃない。 「そうね……、だからかな、先週落ち込んでたよね」 なんとか自分でフォローを入れる。 「うん、こないだは黒い男に負けちゃったの。 でもね! 昨日ね、ハカセがケンタに特訓すれば強くなる! て言ってたよ」 ちゃんと見てるわけではないのでよくわからないけれど、昔からの流れが変わっていないなら、黒い男は物語半ば過ぎに出てくる強敵で、ハカセは主人公のフォローをする大人の一人だろう。 「そっか……、じゃあカズちゃんも特訓したらヒーローになれるかもしれないね」 「そうだよね! でね、ママ!」 カズの目がきらめいた。 それは母親とかいう立場をどこかに置きさってもクラクラしてしまうほどの純粋で可愛い輝き。 「ケンタがハカセに作ってもらった”ヒーロー養成ギプス”がおもちゃ屋さんで売ってるの。僕もヒーローになりたいんだ!」 あとで思えばほんの気の緩み。 瞳キラキラ攻撃にやられていたのだろうけど……。 「ガズちゃんがそういうならママ応援しちゃう!」 そんなことを答えてしまっていた……。 夕食の支度をしながら考える。 子どもに嘘はつきたくないし、またしばらく質素な食事でこさなくてはならなくなってしまった。 パパが帰ってきたらまた「やられたな」て言われちゃうわね。 でも……今からこんなに話術巧みだと将来は詐欺師なんかになっちゃうんじゃ……。 あ、でも超一流の弁護士になっちゃったりなんかするかもしれないじゃない! いやーどうしましょっ。 「相変わらずの親ばかっぷりお疲れ様」 気がつけばパパが後ろに立っていた。 「あら、お帰りなさい」 「で、今日は質素に……。飯と味噌汁だけか?」 どこから声が出ちゃってたのかしら。なんかもう全部知ってそうな顔と言葉。 「やだ、いくらなんでもそこまで質素じゃないわよ。お魚も今焼け……」 そこには、焼けすぎて黒い塊と化した焼き魚と思われる物体があった。 あら……。 「……食べる?」 返事の代わりに軽いげんこつが返ってきた。げんこつだけくらわして……パパは部屋に向かってしまう。 おかずは……。冷凍してあるカレーの残りでいっか。 「カズー。ヒーローになりたいんだってな」 パパの声が聞こえる。 「ヒーロー養成ギプスなんていらないぞ。パパが特訓相手になってやる! さあ、こい!!」 晩酌を減らされるのを予想してるのかしら。 かなり張り切ってカズちゃんの相手をしているみたいだった。 まもなく……夕飯が出来た頃には、突っ伏したパパができあがっていた。 ママにげんこつをくらわしたパパをこらしめるなんて、カズちゃんもう立派なヒーローね。 パパ、おつかれさま。 ○○○○○○○○○○ しき:このお話は過去100のお題にチャレンジしていた時のものです。 ソラ:たしかお題は「ヒーロー養成ギプス」だったよね しき:そそ。難しかったよこれは……。 ソラ:このお題クリアして他の書かずじまいでお題断念ってなにやってるんだろうね〜。 しき:…………。 ソラ:ところでこれのどこがお題にそってるの? しき:ほ、ほら、名前が出てきてるじゃない。 ソラ:でもただの親バカ話みたいだよね。 しき:そんな気がしないでもないね。 ソラ:結局名前が出てきただけ……。 しき:…………。まあ、一応パパ=ヒーローの育て親=養成ギプスてイメージです。はい。 |