不思議な時計

目覚まし止めて      あと5分 布団握りしめ      あと4分 腕を伸ばして      あと3分 時計を手にとり      あと2分 身体を起こして      あと1分 なのにどうして 手の中の時計では     もう30分
 
 

散歩

いつもと同じ道を歩く あのたばこ屋さんの角でいつもの娘に会う その先の公園の入り口で犬の散歩をしている老夫婦に会う いつもと同じ道 いつもと同じ人たち でもそれは本当に「同じ」なのではなくて 同じに見える全く違うもの 無機質に歩いているわけではないから いつもと違う道 いつもと違う人たち でもそれは本当に「違う」わけではなくて 違うように見える同じもの だってここは今までとつながっている いつもと同じ道 いつもと違う道 その道はどんなに複雑に絡み合っても 一本しかない散歩道
 
 

ありがとう

やさしさをおしえてくれたあなたに ありがとう よろこびをおしえてくれたあなたに ありがとう そっとむねをだき かんがえる なにもしらなかったわたしに あなたはこころをくれた かなしみをおしえてくれて ありがとう さみしさをおしえてくれて ありがとう もういないあなたに ありがとう
 
 

人形

つらい 悲しい 怖い 寂しい・・・ 感情って何? 泣くって何? 嬉しい 楽しい 穏やかな・・・ 感情って何? 笑うって何? それは人にあって私にないモノ 人だった私になかったモノ 私はただの人形 人であることを 感情を持つことを捨てた ただの人形 人形は泣かない 人形は笑わない でも私は 人になりたい
 
 

help me!

神様 助けて そんなこと言われても 助けられない神様もいる 砂漠にいて喉が渇いて お米の神様助けて って それは違うでしょう やおよろずの神様の中から あなたが助けてを言う相手間違ってませんか? あなたを助けてくれる カミサマ は ずっと近くにいるのかもしれないね
 
 

ふとん

眠りという安らぎを そっと包み込んでくれるあなた やさしくて あたたかくて 握り締められても 蹴り飛ばされても いつでも癒しをくれる 太陽が大好きなあなたへ 安らぎをありがとう
 
 

底なし

いつまでもどこまでも ただずっと沈んでいく ここは底なし沼かもしれない。 いつまで続くかわからない下降の道すじ どこに底があるかわからないから もがくのをやめてみたら 意外と下降は止まったりするかもしれない 底だと思えば あとは上がるしかないね ちょっとだけ足を止めてみよう しっかり地面 踏みしめよう
 
 

空と海と…

それは高く いつでもどこからも見えるのに 手が届くと思っていた そこに行ってみたいと思っていた それは深く 底が見えるのに深く 手が届くと思っていた 触れられると思っていた それは遠く 近くにいるのに遠く 感じあっていると思っていた 離れることはないと 思っていた ずっと遠いと思っていた 触れられないものだと思っていた
 
 

たったひとつのキャンバス

失敗した そう思っても キャンバスは一つしかない 色でごまかしてみた だめだった 白い絵の具で書いた絵を隠してみる そしてその上に別の絵を描いてみた うまくいったかもしれない 乾くまで待ってみる 今度は 乾いた絵の具がぱらぱら落ちた 残った絵の具の後ろから 失敗した絵が見えている もう一度塗り重ねてみた 何度も何度も重ねていった 最初の絵 次に描いた絵 そのあとに描いた絵 全部全部見えてしまう いっそのこと 全部見せてみた 見えるように最後の筆をたしてみた 不恰好な絵だけれど このまま飾ることにした
 
 

はこのそと

出して! ここから 出して! 少女は叫ぶ 閉じ込められた はこのなか はこのそとからそれを見る私は さらに大きな はこのなか 私は言わない 出して! そう叫んでも 誰にも聞こえないから そこから出たいのなら 自分で出ればいい だってほら はこからの出口は目の前にあるんだから 少女はそれを見失っているだけ 出たければ自分で出ればいい でも 私は出ない はこのなかも いごこちが良かったりして